災害時に看護師が担う役割
災害医療に関する正しい基礎知識を身につけていなければ被災地で適切な看護を行うことはできません。ここでは各段階における看護師に求められる役割についてまとめています。
災害時は幅広い役割が求められている
災害発生時は人材が限られ、医療物資の確保も難しくなります。また、二次災害が発生する可能性もあり、安全が保証されない状況下で活動するため、看護師には適切な医療処置を行うだけでなく、避難誘導や精神面のケアなど、通常よりも幅広い活動が求められています。
看護師がどのような活動を行っているのか、段階ごとに見ていきましょう。
災害発生直後~72時間まで
災害が発生した直後から72時間が経過するまでを急性期といいます。看護師の主な活動は、施設の被害状況の確認や使用可能な医療機器の確認といった「状況把握」をはじめ、患者の安全確保、避難経路や避難誘導の確認、施設内の危険な場所の把握や立ち入り禁止区域の指定などの「安全確保」、施設内の稼働状況の確認、非常食や医薬品、衛生材料などの確保と管理などの「ライフラインの確保」、被災者の受け入れ体制の整備や患者と家族の身体的・精神的サポート、生存者の救出、遺体の処理と遺族のケアなどの「被災者対応」、職員の安否確認や他の医療機関への応援要請といった「人材確保」です。
72時間後~約1ヶ月後まで
72時間後から約1ヶ月後までのことを「亜急性期」といいます。看護師の主な活動は、標準予防策及び経路別感染対策の実施による感染制御や緊急時の感染対策ガイドラインの活用、二次災害の防止といった「安全管理」、「他機関との連携」、通常診療体制への調整や必要な物資の確保といった「通常診療に向けた準備」、「被災者のメンタルケアや感染症とその蔓延に関する調査」、「災害発生直後より勤務している職員のメンタルケアやボランティアを導入するかどうかの検討」です。
約1ヶ月後~1年程度
災害発生の約1ヶ月後~1年後までの慢性期における看護師の主な活動は、「亜急性期まで行ってきた看護活動を継続するかの検討」や「復旧状況の確認」、「支援が必要かどうかの検討」、「被災者の心身状態の把握とケア」、「感染症や慢性疾患の看護」、「通常業務への移行」などです。
臨機応変な判断と的確な行動が必要
災害発生時は冷静かつ的確に看護活動を行わなければなりません。いざという時に慌てないように普段から準備しておくことが大切です。
例えば、人材の育成や各種設備の点検です。災害を想定して災害医療の教育を行ったり、部門ごとに災害対策のマニュアルを整備したり、食料の備蓄状況を確認したり、危機管理体制や緊急時の連絡手段を確認したりしておくと災害が発生してもスムーズに行動することができます。また、日頃から防災訓練を実施しておけば緊急時の動線を把握しやすくなります。